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脳機能改善におけるクレアチンの有効性

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本資料は、健康食品やサプリメント等の製造・販売者向けの記事となります。
記載している情報は一般消費者向けではなく、
市販品についての効果・効能を標榜するものではありません。
ご了承のうえ、閲覧してください。

クレアチンの特徴

クレアチンとは

クレアチンは有機酸の一種で、ヒトの体内にもともと存在するものです。人体のクレアチンの総重量は体重70㎏の成人で約120gと推定1)されており、このうちの大部分 (約95%) は筋肉に含まれています。筋肉中のクレアチンは短時間高強度の運動において重要な存在です。
身体を動かす際のエネルギー源はATP(アデノシン3リン酸)ですが、ATPがリン酸を遊離してADP(アデノシン2リン酸)に変化する際にエネルギーが放出され、それが筋肉の収縮に利用されます (図2)。このATPの量はごく限られている為、激しい運動ではすぐに枯渇してしまいます。運動を続けるにはADPにリン酸を与えATPに戻したり(ATPの再合成)、産生したりする必要があります。そのATPの再合成に必要なのが、クレアチンにリン酸が結合したクレアチンリン酸です。
クレアチンの摂取により筋肉中のクレアチン(クレアチンリン酸)貯蔵量を増加させることで、エネルギー量の増加つまり筋力パフォーマンスの向上につながります。実際に1992年に開催されたバルセロナ五輪の金メダリスト、リンフォード・クリスティ(100m走)とサリー・ガネル(400mハードル)がクレアチンを摂取していたことが報じられスポーツ界ではクレアチンが注目を集めました。現在では多くのスポーツ選手が摂取しています。

クレアチンの安全性

クレアチンは、「クレアチン・モノハイドレート(クレアチン一水和物)」として流通されています。クレアチン・モノハイドレートには、数多くの臨床試験の蓄積と、長年にわたり喫食されてきた食経験があります。
国際スポーツ栄養学会(ISSN:International Society of Sports Nutrition)Position Standでは、クレアチン・モノハイドレートの有効性・安全性について、次のように紹介しています2)

“クレアチン・モノハイドレートの摂取は安全であるだけでなく、乳幼児から高齢者までの健常者および患者の集団において、多くの有効性が報告されている。クレアチン・モノハイドレートの短期または長期の使用(最大30g/日を5年間)が、健康な個人や臨床患者の集団に有害な影響を及ぼすという説得力のある科学的証拠はない。”
引用元:Kerksick, CM. et al. : J Int Soc Sports Nutr, 15(1), 38. (2018)

加えて、同Position Stand内の「文献に基づくサプリメントの分類」における「筋肉量向上のサプリメント」、「パフォーマンスの向上」の両評価項目で、クレアチン・モノハイドレートは最も高い評価である「I. 有効性を裏付ける多くの根拠論文があり、高い安全性」に分類されています。

クレアチンの脳機能効果

クレアチンの脳機能メカニズム

クレアチン摂取により筋機能が高まることは多くの文献で示されていますが、脳の健康やメンタルパフォーマンスを評価した文献も増えています。体内のクレアチンの約95%は筋肉に含まれますが、残りの大半は脳内に存在しています。クレアチンは血液脳関門を通過することが明らかになっており、20g/日×7日間経口摂取することで脳内のクレアチン量が約10%増えることが報告されました3)。脳の重量は体重の2%程度にすぎませんが、全エネルギーの約20%を消費しています。エネルギー消費の部位として脳は筋肉同様に重要で、クレアチン摂取による脳機能への影響は長年研究がされています。次項からは各場面におけるクレアチンの脳機能効果を紹介します。

脳疲労の軽減

若い被験者を対象にクレペリンテストを2回実施しました。縦軸がスコア、横軸がテスト開始からの時間です。8g/5日のクレアチン摂取群では非摂取群に比べて、高いパフォーマンスを示しました。このことより、クレアチンには脳疲労軽減効果があることが示されました。(引用:Watanabe A et al., Effects of creatine on mental fatigue and cerebral hemoglobin oxygenation Airi Watanabe,2002.)

睡眠不足時の認知力向上

睡眠不足時の認知機能に及ぼすクレアチンの影響は複数の研究が存在しています。McMorris et al. (2007) では被験者にクレアチンを20g/日×7日間摂取させ、中程度の運動を伴い36時間寝ていない状態での実行機能・ワーキングメモリー の評価を行っていました4)。クレアチン摂取により実行機能・ワーキングメモリーのスコアーがプラセボ群に比べて有意 (p<0.01)な改善が確認されました。Cook et al. (2011) では、睡眠時間の制限(3-5時間に制限)を課したラクビー選手を被験者として試験がされました5)。試験当日にクレアチンを50mg or 100mg/kg・BW 摂取させ、ラグビーのパスの正確性を評価する試験をおこないました。クレアチンを摂取した睡眠制限群では、プラセボを摂取した睡眠制限群に比べて有意 (p<0.001) にパスの正確性が向上しました。5)

運動後の認知機能向上

 Lawert et al. (2020) ではムエタイ選手を被験者として、クレアチンを3g/日×28日間摂取させムエタイ運動後の認知機能を評価しています6)。クレアチン摂取群では認知テストの処理速度が有意 (p<0.05) に向上し、試験の正確性が高まる傾向がみられました。
本研究は3g/日の摂取量で認知機能に対する好影響が確認された点が画期的です。従来はクレアチンの脳機能の研究といえば20g/日×7日間の摂取で実施されることが中心でしたが、このように3g/日のような低用量でも研究報告されています。

精神疲労後の認知力向上

Van Cutsem et al. (2019) では被験者にクレアチンを20g/日×7日間摂取させ、精神疲労を課しながら注意力と抑制力を評価する90分間のストループ試験を実施しています7)。クレアチン摂取群ではプラセボ群に比べ試験の正確性が有意(p<0.05) に改善されました。

ストループ試験は多くの研究で用いられており、Sousa et al. (2020) ではeスポーツプレイヤーを被験者として2.5時間のゲーム前後で正確性を測定しています8)。ゲーム前後でストループ試験の正確性は有意 (p<0.05) に低下しました。長時間のゲームプレイは認知機能の低下を引き起こしているといえます。Van Cutsem et al. (2019) の結果を踏まえると、クレアチンの摂取はゲームによって引き起こされる認知機能の低下を防ぐ可能性があります。

まとめ

以上のようにクレアチンは筋機能だけでなく脳機能でも様々研究が報告されており、今後は筋肉向けサプリメントだけではなく脳機能サプリメントとしても期待されています。

参考文献

1) Balsom, PD. et al. : Sports Med, 18(4), 268-280 (1994)
2) Kerksick, CM. et al. : J Int Soc Sports Nutr, 15(1), 38. (2018)
3) Turner, CE. et al. : J Neurosci, 35(4), 1773-80. (2015)
4) McMorris,T et al. : Physiol Behav, 90(1), 21-8. (2007)
5) Cook, CJ. et al. : J Int Soc Sports Nutr. 8, 2. (2011)
6) Lawert,AM et al. : NeuroSports. Vol. 1 , Article 6. (2020)
7) Van Cutsem et al. : Med Sci Sports Exerc. 52(1), 120-130. (2019)
8) Sousa, A et al. : Front Psychol. 11, 1030. (2020)

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