食品素材メーカーのユニテックフーズ~世界各地から原料を厳選食品素材メーカーのユニテックフーズ~世界各地から原料を厳選

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即溶解ペクチンの基礎特性とアプリケーション応用例

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はじめに

生活者の多様な要望に応えるべく、多種多様な食品が開発・販売されています。最近では風味や食感のみならず、より簡単・便利な商品が望まれています。家庭用商品はもちろん、介護・病院・カフェ・レストランなどの現場においても作業時間の短縮は重要な課題となっています。業務用デザートには、カラギナン・ゼラチン・寒天をはじめとした各種ハイドロコロイドが使われていますが、一般的にゲル化剤の使用には加熱・冷却工程が必要で、作業効率やエネルギー効率の改善が求めれています。当社ではこれらの問題を解決するため長年研究を続け、加熱・冷却が工程が不要なゲル化剤「即溶解ペクチン」を開発しました。ここではその特性およびアプリケーション例について紹介します。

1.ペクチンとは

ペクチンは主にガラクツロン酸から構成される酸性多糖で、飲料やジャムなどにゲル化・増粘安定用途として広く用いられています。工業的にはリンゴや柑橘類を原料として製造されています。
ペクチンはエステル化度(DE,メチルエステル化されたガラクツロン酸の割合のこと)の違いによって2種類に分類されています。DE50%以上のものを高メトキシル(HM)ペクチン、DE50%未満のものを低メトキシル(LM)ペクチンと呼んでいます。HMペクチンとLMペクチンでは溶解やゲル化のための条件や機構、適したアプリケーションが異なります。どちらのペクチンとも一般的には加熱溶解のうえ利用されます。特にLMペクチンは80~90℃で10分間程度の加熱が必要となります。HMペクチンは主に高糖度ジャムのゲル化剤や酸性乳飲料の安定剤として利用されています。LMペクチンは、カルシウムの存在下でゲル化することを利用して、低糖度ジャム、フルーツゼリー、乳製品デザートなどに利用されています。

2.即溶解ペクチン

2-1.即溶解ペクチンとは


即溶解ペクチンの冷水溶解性

即溶解ペクチンは、独自の技術によって非加熱溶解を実現した画期的なLMペクチンです。即溶解ペクチンの分子は水分子と容易に水和し、簡単な攪拌で分子鎖を広げられることが特徴です。15℃の水の場合は1分間で、ポットのお湯(80℃)の場合は30秒間で100%溶解します。図1は従来のLMペクチンと即溶解ペクチンの冷水可溶率を比較したグラフです。冷水可溶率(%)は、「冷水可溶率(%)=(15℃の水に溶解させた時の最大破断応力 / 加熱溶解時の最大破断応力)×100」となります。従来のペクチンでは困難だった15℃での完全溶解が即溶解ペクチンでは実現しています。

2-2.即溶解ペクチンのゲル化機構とゲル特性

一般的なLMペクチンと即溶解ペクチンの違いは溶解温度のみです。よって即溶解ペクチンのゲル化に影響する主な因子はカルシウム(2価イオンの濃度)、エステル化度(DE)、pH、糖度(Brix)、緩衝塩など通常のLMペクチンと変わりありません。中でもカルシウム濃度が最も影響し、カルシウムの存在下でゲルを形成します。形成されたゲルは透明性に優れており、ベタつきがなくすっきりとした食感です。ペクチンは果実由来の多糖類であるためフルーツのフレーバーと相性が良く、風味への影響が少ないゲル化剤です。即溶解ペクチンのゲルは、50℃付近でもゲル化していためゼラチンのように室温で溶けず、運搬中にゲルが溶けてしまう可能性が低いです。また再セット性(一度崩したゲルが元に戻る性質)があるため、比較的衝撃にも強いゲルとなります。

2-3.即溶解ペクチンの使用条件

即溶解ペクチンは、水中で分散状態を経て素早く溶解します。通常のペクチンよりも分散→溶解の速度が早く、分散工程を誤るとダマになってしまいます。一度ダマになると溶解することは非常に困難になります。ダマを防ぐ方法としては、砂糖などの他素材と粉体混合して溶解するのが望ましいです。
また、通常のLMペクチン同様にカルシウムが多く含まれる硬水や牛乳などには直接溶解することができません。カルシウムが含まれているとペクチン粒子の水和が阻害され、溶解が困難となります。この場合はペクチン溶液を別に作成する必要があります。
使用するカルシウムの種類や緩衝塩の種類を組み合わせることでゲル化速度や、ゲルの性質をコントロールすることができる。表3に代表的なカルシウム塩の種類、表4に緩衝塩の種類を示す。さらに、ペクチンの添加量やカルシウムの添加量を調整することで、目的に合わせた物性を作ることが可能となります。

Caの種類 Caの溶解性 ペクチンとの反応性 ゲル化の方法
乳酸カルシウム
塩化カルシウム
酸性・中性両域ですぐに溶ける 瞬時にゲル化 ペクチン溶液と触れた瞬間にゲル化
硫酸カルシウム
クエン酸カルシウム
酸性・中性両域で
ゆっくり溶ける
徐々にゲル化 ペクチン溶液とゆっくり反応しゲル化
リン酸水素カルシウム 酸性域で溶ける中性域で溶けない 中性:変化せず酸性:徐々にゲル化 酸を加えて、pHを下げることでCaイオンを放出しゲル化する

表3 ゲル化因子 カルシウム塩(Ca)の選択

緩衝塩の種類 Caの封鎖力 ペクチンとの反応性
・クエン酸Na
・ピロリン酸Na
・酸性ピロリン酸Na
・ポリリン酸Na
・メタリン酸Na
弱い

強い
速い

ゆっくり・なだらか

表4 緩衝塩(Na)の選択

3.即溶解ペクチンを使用したアプリケーション

即溶解ペクチンを用いれば、今まで実現できなかったさまざまなアプリケーションが可能となります。以下に代表的な応用例を紹介します。

3-1.介護食:水分補給ゼリー(お茶ゼリー)

参考レシピ
原料 配合(g)
即溶解ペクチン製剤
(即溶解ペクチン+Ca等を
混合した製剤)
2.0
砂糖 2.0
粉末緑茶 1.0
水(または湯) 100.0

嚥下困難者向けの水分補給ゼリーには、一般的にカラギナン製剤が用いられています。しかし、カラギナンのゲル化には加熱溶解→冷却が必要となり、介護者の手間や火傷などの危険性が問題でした。また、カラギナンゲルの性質として一度ゲルを崩してしまうと離水を生じるため誤嚥の危険性があります。カラギナンゲルとペクチンゲルをバットに乗せて傾けた際、離水の多いカラギナンゲルは下部へ滑っていきますが、ペクチンゲルは離水が少なく保形性を保ったままゆっくりと移動します。また、ペクチンゲルは上顎と舌で咀嚼できる食感で、嚥下困難者にとって好ましい物性です。このように即溶解ペクチンを使用することで簡単かつ優れた食感の介護食ができあがります。

3-2.ココアスムージー

ココアスムージー

レストランやカフェなどの非常に忙しい現場においても、短時間で簡単に作れるスムージーです。このアプリケーションは即溶解ペクチン製剤とココアや砂糖などの他素材をミキサーで約30秒間水に溶解させた後、牛乳を加えてミキサーで約30秒混ぜるだけで出来上がります。誰でも簡単に操作でき、さらに注文を受けてから2分以内で提供できます。ペクチンの添加量を調整することで、さらっとしたスムージーから、とろんとした重たい食感のスムージーまで、フレーバーや季節に合わせた食感作りが可能となります。アレンジメニューとして、完成したスムージーに氷を加えてさらにミキサーで攪拌すると、シャリシャリとした夏に最適のシェイクにもなります。これらスムージーはペクチンの網目構造が長時間保持されているため、時間が経ってもスムージー特有の食感を楽しむことがます。

3-3.その他

健康食品分野では一食代替ダイエットシェイクや、デパート・スーパー・コンビニなどにおいて新鮮なフルーツを透明ゲルで包み込んだ生フルーツゼリーなど非加熱でLMペクチン特有の物性が出せることを生かして様々なアプリケーションに応用できます。

まとめ

当社では即溶解ペクチンとして「UTFC LM QS 400C」や「ミルキーリボン」を、ブレンド製剤として「ユニガム QSシリーズ」を展開しています。QSシリーズは、カルシウム塩や緩衝塩との組み合わせによりゲル化を調整したタイプで、より簡単に即溶解ペクチンを使用できるよう設計したものです。
即溶解ペクチンは粉末状態で水に容易に溶解・ゲル化するという極めてユニークな性質を持つLMペクチンです。加熱・冷却不要で、簡単に扱うことができるため、さまざまな分野での応用が期待できます。

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