ヘルシーさから人気の脂肪0・低脂肪カテゴリですが、乳脂肪含有量が少ないほどあっさりとしたテクスチャ・風味になりやすく、脂肪感や濃厚感は開発において重要なキーワードです。今回は乳製品の濃厚感をテーマに各種素材の特徴を紹介します。
ペクチン
ペクチンはリンゴやレモン等、果物の植物細胞壁中に多く含まれている多糖類です。ペクチンには、HMペクチンとLMペクチンの2種類がある。HMペクチンは、タンパクを安定化する効果があり、ドリンクヨーグルトや殺菌乳酸菌飲料、酸性乳デザートの凝集・沈殿防止に常用されています。一方、LMペクチンは、カルシウムの存在下でゲル化する性質があり、ミルクプリンやデザートベース、ヨーグルトやアイスクリームのボディ感付与、フルーツプレパレーションやすりおろし状食感の微細ゼリーなど多様なものに使用されています。LMペクチンは、カルシウム量やpH、Bx.などの様々な因子により影響を受けるため、レシピに合わせて適切なペクチンを選ぶ必要があります。ペクチンの由来原料にはリンゴやレモン等ありますが、リンゴ由来ペクチンは側鎖の割合が高くカルシウムとの反応が緩やかという特徴があります。乳製品にリンゴ由来ペクチンを使用することで、穏やかにネットワークを形成し特有の粘性を発現するため脂肪様の食感を付与することができます。
ゼラチン
ゼラチンは、原料となる豚皮や牛骨を酸処理またはアルカリ処理することにより得られます。原料や処理方法、ゼリー強度(ブルーム値)の違いにより様々な物性になるため、バラエティ豊かな食感を出すことができます。例えばゼラチンタイプの選択と配合により、とろけるような食感や脂肪様のコクのある食感の演出が可能です。また高ブルームのゼラチンは、色や風味の優れた高純度タイプでプレーンタイプのヨーグルトなど風味が気になるときに好評です。
乳風味補強材
乳風味補強材"バッズシリーズ"は、バターやクリーム、チーズ等の乳素材を原料とした「乳等を主要原料とする食品」です。独自の酵素技術により乳本来の風味を損なうことなく、エキスパウダー化しました。わずかな添加量で乳風味を補強できるため、カロリーオフ需要や乳原料不足や価格高騰対策として利用されています。例えば、乳原料の配合量を減らした際に0.1~0.5%添加することで、リッチな乳の呈味と脂肪感を付与することが可能です。また豆乳や大豆蛋白質のような植物由来の食品へ添加した際は、その雑味や青臭さをマスキングし、味をまとめる効果もあります。複数ラインナップでバター、ミルク、クリーム、チーズといった主要な乳風味をカバーしています。
使用例
1)脂肪0ヨーグルトへの応用
脂肪分を除いてしまうと、あっさりとした軽いテクスチャになります。そこでリンゴ由来のペクチンと高ブルームのゼラチンを使用して脂肪感を付与させます。ペクチンは、乳中で特有の構造ネットワークを形成し、増粘作用を発現します。この作用により、脂肪様のコク味の有る食感を出すことができます。特にリンゴ由来のペクチンを使用することで、脂肪分により近い食感を効果的に付与することが可能です。また、ゼラチンは融点が低いことから、添加によりとろけるような食感を演出します。以上のことから脂肪0ヨーグルトに脂肪様食感を出すためにはリンゴ由来LMペクチンとゼラチンの組合せが有効です。
また乳風味補強材を加えることにより、脂肪独特の風味・うまみを一層強化することができます。
原材料名 | 配合量% |
---|---|
砂糖 | 9.0 |
脱脂粉乳 | 8.9 |
ヨーグルト(スターター) | 2.0 |
乳風味補強材(ミルクバッズJB) | 0.2 |
ゼラチン(300 PS 60) | 0.2 |
リンゴ由来LMペクチン(LM SN 325) | 0.1 |
2)脂肪0プリンへの応用
ヨーグルトに限らずデザートについても、カロリーオフ需要は堅調に推移しています。そこで無脂肪ゲルプリンについて配合を検討しました。ペクチンを含んだゲル化剤を使用することにより、無脂肪でもボディー感を付与することが可能となります。また、乳風味補強材を加えることで味気ない無脂肪デザートも乳リッチな風味へ補強することができます。